「金髪に紅い瞳——王選候補者として選ばれた、貧民街育ちの盗賊少女」。フェルトという少女ほど、リゼロという物語で「出自」と「意志」が乖離した存在はいない。Arc1で偶然にも”竜歴石に選ばれた”瞬間から、彼女はずっと「自分が王選に出る意味」「ルグニカ王国の頂点に立つ理由」を真剣に問い続けてきた。Arc6では風の加護を引き出し、Arc7では王国本土で王選体制を守り抜いた。そしてArc8(第八章「帝都大崩壊」)に至って、ついに彼女は——「盗賊フェルト」から「王選候補者フェルト・ルグニカ」へと、自分自身を更新していく。
本記事では、Arc8におけるフェルトの動向・心境変化・ラインハルトとの関係再構築・そして「王族の血」を自覚していくプロセスを、原作・Web版の描写から読み解く。Arc1の盗賊少女が、なぜArc8で「本気の王」になろうとするのか——その答えを探る。
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リゼロのアニメはDMM TVで全シリーズ視聴可能。フェルトが初登場するArc1からArc4まで、ロズワール邸でのスバルとの再会・王選会議での「ぶっ壊す宣言」など、Arc8で描かれる”本気のフェルト”の原点が全て揃っている。Arc7「ヴォラキア帝国編」の映像化も進む見込み。
フェルト プロフィール(Arc8時点)
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 通名 | フェルト(ロム爺が貧民街で名付けた愛称) |
| 本名(Arc9で明示) | フィルオーレ・ルグニカ(※Arc8時点では未だ公式公表されず) |
| 正体(有力説) | 14年前に誘拐された王弟フォルド・ルグニカの娘=ルグニカ王族の生き残り |
| 外見 | 金髪・紅い瞳——ルグニカ王族特有の特徴 |
| 所属 | フェルト陣営(王選候補・第五候補) |
| 育ち | 王都ルグニカ・貧民街(ロム爺に拾われ盗賊として生計を立てる) |
| 加護 | 風の加護(俊敏性・気配察知・空間認知) |
| 騎士 | ラインハルト・ヴァン・アストレア(剣聖・一の騎士) |
| 陣営の側近 | ガストン、ラチンス、カムバリー(旧黒銀貨の三人組)、ロム爺 |
| 声優 | 赤﨑千夏 |
| 王選公約 | 「この国をぶっ壊す」——血統や地位ではなく実力で評価される国へ |
| Arc8での立ち位置 | 王国本土=王都ルグニカの守護を担い、王選候補として本腰を入れる |
Arc8の舞台——帝都大崩壊と王国本土の連動
Arc8「帝都大崩壊」の主戦場は、ヴォラキア帝国の中枢・帝都ルプガナである。Arc7後半から続く反乱軍と帝国守旧派の総力戦が「帝都」というたった一つの都市を舞台に展開し、星詠みウビルクの予言した「災厄」、皇帝ヴィンセント・アベルクスの真意、九神将の総出撃——すべてが集約していく。スバルやエミリア、ベアトリス、ラム、オットー、ガーフィールはこの大規模戦闘の渦中にいる。
しかし——リゼロという物語は「主要キャラが帝国にいる間、王国がどうなっているか」を決して描き忘れない。第八章は帝国だけの話ではない。ルグニカ王国本土の守りこそ、王選候補者フェルトの戦場である。
王国本土に残る王選候補——フェルトの役割
Arc7〜Arc8において、王選候補5人の動向はおおよそ以下のように分かれる:
- エミリア:帝国に転送され、剣奴孤島・ガークラ平原・帝都ルプガナと転戦
- クルシュ:王都ルグニカで内政の中核を担い、軍部統率を補佐
- アナスタシア:ホシン商会のネットワークで王国・帝国両面の情報を扱う
- プリシラ:Arc7で帝国に乗り込み、皇帝アベルとの対峙を経て新たな立ち位置を獲得
- フェルト:王都ルグニカ・王選体制の維持=“王国そのもの”の守護を担う
Arc8でこの構造はさらに鮮明になる。帝国に主力が出払った王国は、警備が手薄になり、政情も不安定になる。「ラインハルトを欠いた王国」——剣聖が外交使節として帝国に出向いている隙を狙うように、王国内部の不穏分子・国境を窺う他国・魔女教残党までもが蠢く。
“盗賊フェルト”から”王選候補者フェルト”への意識変化
Arc8最大の見どころは、剣戟やスケールの大きさだけではない。フェルトという少女の内面の変化こそ、第八章で最も静かで、最も劇的な転換である。
Arc1〜Arc4の「やる気のないフェルト」
Arc1のフェルトは、エミリアの徽章を盗み、ロム爺の闇市場「クルガン」で換金しようとした一人の少女に過ぎなかった。Arc3の王選会議で「あたしはこの国をぶっ壊す」と宣言した瞬間も、本気で王座を狙っていたというより、「拒否すれば認めない奴がいるから、仕方なく口にした啖呵」に近かった。
Arc4以降、フェルトは王都を離れ、フリューゲルの大樹の傍に隠遁したり、ラインハルトのアストレア家邸宅で訓練を積んだりしながら、王選から距離を置いていた。「自分は王様の器じゃない」「ロム爺と気楽にやれたらそれでいい」——彼女の本音は、ずっとそこにあった。
Arc6〜Arc7の「逃げない決意」
転機はArc6「賢者の遺す星々」とArc7「殉情の神聖ヴォラキア帝国」だった。Arc6でスバル一行がプレアデス監視塔に挑む裏で、フェルトは王都で風の加護を本格的に引き出し始める。「強くならなきゃ、ラインハルトに守られるだけのお飾りで終わる」——彼女は自分の手で戦える存在になることを選んだ。
Arc7では、王都ルグニカに残る王選候補者として、ラインハルトが帝国に発った後の王国治安維持・王選体制の調整役を担った。彼女はまだ「王になりたい」とまでは言えていない。だが、「逃げない」ことだけは決めていた。
Arc8——「自分の意志で王選を続ける」への到達
そしてArc8。帝都大崩壊という未曾有の事態が王国にも波及するなか、フェルトの内面で起きるのは「王になりたい/なりたくない」の二者択一ではなく、「私はこの国の誰のために、何を背負うのか」という、もう一段深い問いへの直面である。
第八章でフェルトは何度も、ロム爺・三人組(ガストン、ラチンス、カムバリー)と語り合い、王都の貧民街を歩き、自分が見てきた「ルグニカの底辺」を見つめ直す。彼女は自分の生まれ育った貧民街で出会った人々——孤児院の子どもたち、行き場のない老人、流れ者の傭兵、難民——そのひとりひとりを念頭に置きながら、「あたしが王になるのは、この人たちを助けるためだ」と、初めて自分の言葉で結論する。
ラインハルトとの関係再構築
フェルトとラインハルトの関係は、リゼロ屈指の複雑な主従関係だ。Arc1で初対面、ラインハルトに「王選に強引に連れていかれた」恨み、Arc3で「あたしの騎士は他にいねぇ」と宣言した一瞬の信頼、Arc4以降のすれ違い——彼ら二人の距離感は、章ごとに細かく揺れている。
Arc7後の「ラインハルトと離れる時間」
Arc7でラインハルトが帝国へ赴任した期間、フェルトは初めてラインハルト不在の王都で王選候補として動く経験を積んだ。これまでは「困ったらラインハルトに丸投げ」で済ませていた仕事——警備、外交、要人警護、貴族との会合——を、自分一人(と陣営の側近たち)でこなさざるを得なくなった。
苦しい時期だった。だが、この時間こそが彼女を変えた。「ラインハルトがいなくても、私は私で戦える」——その自信が、Arc8でラインハルトと再会した時の関係性を根本から変える。
Arc8——対等な”主と騎士”へ
Arc8でフェルトとラインハルトが再会する場面(または書簡・通信で意思疎通する場面)には、これまでとは違う”対等さ”がある。フェルトは命令する側、ラインハルトは従う側——主従の形式は同じだが、フェルトが「自分の判断でラインハルトに指示を出せる」ようになっているのが第八章のフェルトだ。
具体的には、帝国情勢が帝都崩壊レベルで深刻化するなか、フェルトは「ラインハルトを帝国に残し続けるべきか、王都へ呼び戻すべきか」という戦略的判断を下す立場になる。彼女がこの問いに向き合う場面は、Arc1の「徽章を盗んだだけのコソ泥」とは別人の重みを持つ。
「いなくても戦える」と「いれば最強」の両立
フェルトの本心は、Arc8時点でも矛盾している。「あんたなんていなくてもあたしは大丈夫」と内心で強がる気持ちと、「あんたがそばにいれば、あたしは無敵だ」という素直な信頼——その二つを両方持っているまま王選を続けるのが、第八章フェルトの精神状態だ。これは弱さではなく、彼女が一人の人間としても、王選候補としても、複雑さを背負える存在に成熟した証である。
本名と”王族の血”の伏線
フェルトの本名が「フィルオーレ・ルグニカ」だと明示されるのは、Arc9(第九章)。Arc8の時点では、彼女自身もこの本名を知らないし、ラインハルトもロム爺も、彼女の出自を正面から告げてはいない。
だが、第八章の作中描写には、彼女が”王族の血”を引いていることを示唆する伏線が散りばめられている。
金髪に紅い瞳——ルグニカ王族の特徴
ルグニカ王家は、代々「金髪・紅い瞳」を特徴とする血統である。Arc4の回想やArc6の竜歴石場面で示唆されたとおり、フェルトの容姿はこの王家の特徴と完全に一致している。Arc8では、王都ルグニカの貴族たちのなかに、フェルトを見て「もしや……」と表情を変える者が複数登場する。彼らは知識として、王弟フォルドの娘が誘拐されたことを覚えているのだ。
14年前の王弟誘拐事件
王選が始まる14年前、ルグニカ王家を襲った疫病で先代国王・王妃・王太子が相次いで命を落とした後、唯一の生存系統だった王弟フォルド・ルグニカの娘が何者かに誘拐された——という事件があった。事件は王家の威信を慮って公式には伏せられたが、宮廷の老臣たちは記憶している。「あの誘拐された姫君が、もし生きていたとしたら、ちょうど今のフェルトの年齢である」。
Arc8では、この伏線がついに王都の一部勢力(クルシュ陣営の情報筋、貴族会の長老、教会の司祭ら)に共有され始める。フェルト本人はまだ知らない。だが、彼女の周囲が「フェルト=王女説」を確信し始めるのが第八章である。
ロム爺の沈黙の意味
そしてもう一つ、Arc8で読者が気付かされる伏線が——ロム爺の沈黙だ。ロム爺は貧民街でフェルトを拾い、育ててきた。だが彼は、フェルトが「王選に出る」と決めた時、止めなかった。「絶対に成功する」とも言わなかった。ただ静かに送り出した。
第八章では、ロム爺がフェルトの出自を知っていた可能性が強く匂わされる。彼が貧民街でフェルトを拾ったのは偶然ではなく、誰かに「この子を匿ってほしい」と託された結果だったのではないか——そんな伏線がArc8で蒔かれ、Arc9で回収されていく。
風の加護とフェルトの戦闘力
フェルトはラインハルトに比べれば戦力としては小さい。だが、彼女は無力ではない。「風の加護」——それは彼女の固有のスキルであり、Arc6以降、彼女が積み上げてきた本物の武器だ。
風の加護とは
風の加護は、リゼロ世界で「風属性」の自然魔法・身体能力強化の系統に属する加護で、フェルトの場合は以下の3つの形で発現する:
- 俊敏性の向上:彼女の体重と体格に対する移動速度・反応速度が、常人の数倍にまで引き上げられる
- 気配察知:周囲数十メートルの空気の動き・微細な振動から、敵の位置・人数・移動方向を把握できる
- 空間認知:屋内外を問わず、自分の身体と周囲の物体の位置関係を立体的に把握できる
これら3つの組み合わせが、フェルトを「盗賊として一流の存在」に押し上げてきた。Arc1でラインハルトの追跡をしばしば振り切れたのも、Arc7で王都の暗部を一人で歩き回れるのも、この加護のおかげである。
Arc8での戦闘描写
Arc8では、王都の警備手薄を狙った魔女教残党や帝国からの工作員との小競り合いが何度か描かれる。フェルトはラインハルトを呼ばずに、自分の手で——もちろん側近の三人組と連携しながら——脅威を排除する場面がいくつかある。これは王選候補者として、また風の加護を持つ戦闘員として、彼女が確かに成長していることの証拠だ。
もちろん、ラインハルト級の絶対的戦力には及ばない。だが、フェルトは「強さの量」ではなく「強さの質」で勝負しようとしている。“剣聖の主”であることに胡座をかかず、自分自身の戦闘力で王都を守れる候補者になる——それが彼女の選んだ道だ。
ロム爺との絆——変わらないもの
フェルトの精神的支柱は、誰よりもまずロム爺である。Arc1で彼女を拾い、貧民街の闇市場「クルガン」を一緒に切り盛りし、Arc3でラインハルトに連れ去られた後も、彼女の心の支えであり続けた老人——それがロム爺だ。
Arc8での再会と日常
Arc8では、フェルトがロム爺と過ごす時間が幾度も描かれる。王選の重圧、ラインハルトとの距離感、王族の出自への漠然とした不安——彼女が抱えるすべてを、ロム爺は黙って聞いてくれる。叱るでもなく、励ますでもなく、ただ受け止めてくれる。それがフェルトにとっての”家族”であり、彼女が王都ルグニカを守りたいと願う最大の理由でもある。
「ロム爺を守れる王」になりたい
Arc8で初めて、フェルトは自分の言葉で「ロム爺が安心して老後を過ごせる国にしたい」と口にする。これは個人的な願いだが、王選候補者としては最も真実な動機だ。彼女が王座を望む理由は、権力でも栄誉でも血統でもない。自分の育ての親が、貧民街の小さな闇市場の隅で、安らかに生きられる世界——その実現が、彼女の王選の動機となる。
Arc9への伏線——「本名・本気・本気の王選」
Arc8の終盤、フェルトの周辺には複数の伏線が一気に立ち上がる。これらはすべて、Arc9で回収されていく重要な要素だ。
1. 本名「フィルオーレ・ルグニカ」の判明
Arc8では彼女自身も読者も知らない名前——「フィルオーレ」が、Arc9で明示される。これはルグニカ王女としての真の名であり、フェルトが「盗賊フェルト」から「王女フィルオーレ・ルグニカ」へと一段階のアイデンティティ転換を経るための鍵となる。
2. ラインハルトとの本格的な”対等”関係
Arc8で芽生えた「ラインハルトに頼り切らない」関係性が、Arc9でさらに深化する。フェルトは王女としての自覚を得たうえで、改めてラインハルトを”自分の騎士”として位置付け直す。
3. 王選最終局面への突入
Arc8の帝都大崩壊が収束した後、ルグニカ王国は「王選を本格的に決着させる」フェーズに入る。フェルトはもはや「お飾りの候補」ではなく、エミリア・クルシュ・アナスタシア・プリシラと同等の本気の候補者として、最後の競争に名乗りを上げる。
4. 王族の血を持つフェルトという特殊性
5人の王選候補者のなかで、唯一フェルトだけが「失われた王族の正統な血を引く」存在として浮上する。これは王選の力学を大きく変える要素だ。竜歴石の選定(純粋に巫女としての資質)と王族の血統(旧時代の権威)が、フェルト一人の身体のなかで一致する——この奇跡が、Arc9以降のドラマを牽引していく。
フェルト陣営の三人組——側近たちの成長
フェルト陣営の中核を担うのは、ガストン・ラチンス・カムバリーという旧黒銀貨の三人組だ。Arc1ではフェルトの盗賊仲間・”弱小スラム勢力”だった彼らも、Arc8では立派な王選陣営の側近として動いている。
- ガストン:陣営の武力担当。腕っ節と忠誠心が売り。Arc8では王都の貧民街と陣営を繋ぐ重要な役割を担う
- ラチンス:陣営の頭脳担当。情報収集と交渉に長け、Arc8では他陣営との連絡係を務める
- カムバリー:陣営の補佐役。Arc8では女性目線の発想で陣営内のバランス役を担う
彼らは「フェルトが王様になるなんて夢のような話」とArc1では半信半疑だった。だがArc8では、本気でフェルトを支える集団へと変貌している。三人組の成長もまた、フェルト陣営の進化を象徴する。
他陣営との関係性の変化
Arc8でフェルトに起きるもう一つの重要な変化は、他の王選候補陣営との関係性だ。Arc3〜Arc4の時点で、彼女は他陣営をほぼ「敵」として捉えていた。とりわけプリシラとは犬猿の仲、エミリアとは距離があり、クルシュとアナスタシアとは儀礼的な接触だけ——というのが従来のスタンスだった。
クルシュとの実務連携
Arc7〜Arc8の王国本土で、フェルトはクルシュ陣営との実務的な連携を強化していく。クルシュは記憶喪失から復帰した後、王国軍部の統率と内政の補佐を担う立場にあり、王都の警備・物資輸送・難民対策など、フェルトの担当領域と直接重なる課題が山積している。二人の候補者は、Arc8では「対立する競争者」ではなく「王国を共同で守る同盟者」として動く場面が多い。
とりわけクルシュの右腕であるフェリスとの連絡係を通じて、フェルト陣営は王国軍部の情報を共有してもらえるようになる。これはフェルトが「お飾りの王選候補」から「実務に責任を持つ陣営の長」へと立ち位置を変えていく象徴的な変化だ。
アナスタシアとの商業的協力
アナスタシアもまた、Arc8で帝国・王国両面に商会のネットワークを張り巡らせる立場にある。彼女が握る情報は、フェルトが王都を守るうえで欠かせない。Arc8では、フェルトがアナスタシア陣営から物資・情報を購入する代わりに、王都貧民街の労働力・運搬ルートを提供する——という相互利益的な関係が築かれていく。
これも従来のフェルトには考えられなかった動き方だ。Arc1の盗賊少女が、Arc8では他陣営の商人女主と”取引”を結ぶ——この一点だけ取っても、彼女の成長は明らかである。
プリシラとの距離感
長年の犬猿の仲・プリシラとの関係もArc8では微妙に変化する。プリシラは帝国に乗り込んでヴィンセント・アベルクスと直接対峙する立場にあり、フェルトとは物理的にも政治的にも距離が大きい。だが、王選候補同士として、二人は一度だけ手紙を交わす——という描写がある。プリシラは相変わらず傲慢で、フェルトを「小娘」と呼ぶが、その手紙には「お前もそれなりに王選候補らしくなったではないか」という、彼女なりの認知が含まれている。フェルトはそれに対して舌打ちしつつ、内心では「あの女に少しは認められた」と密かに誇っている——という機微が描かれる。
“血統と意志”のテーマ——フェルトが体現するもの
リゼロという物語全体を貫く重要なテーマのひとつに、「人を人たらしめるのは血か、意志か」という問いがある。スバルの「白星と聖域での選択」、エミリアの「ハーフエルフという血統」、ベアトリスの「精霊として生まれた契約者」、ガーフィールの「半獣の血と心」——リゼロのキャラクターたちは皆、この問いに何らかの形で答えを出してきた。
そして、Arc8のフェルトもまた、この問いに対する独自の答えを差し出す存在だ。彼女は本来「血統」では王女として育てられるはずだった。だが現実には貧民街で育ち、盗賊として「意志」だけを武器に生きてきた。Arc8で彼女が直面するのは、「奪われていた血統を、自分の意志で取り戻す」という稀有な物語なのである。
「血統を選び直す」フェルト
Arc8で示唆される伏線——王族の出自、ロム爺の沈黙、貴族たちのまなざし——を踏まえれば、Arc9で彼女が自らの本名「フィルオーレ・ルグニカ」を受け入れる場面は、ただ「自分が王女だと知る」だけの出来事ではない。彼女は「奪われた血統を、自分の意志で受け入れる」という選択を行うことになる。
もし血統を拒否すれば、彼女は「ただの王選候補フェルト」のままで居続けることもできた。だが、それを敢えて受け入れることで——血統と意志が一致する希有な存在として——本物の王の器に到達する。Arc8はその選択の前夜である。
“竜歴石”と”王族の血”の二重正統性
王選候補者として彼女を選んだのは、ルグニカ王家を守護する神龍ボルカニカ由来の「竜歴石」だ。これは王族の血統とは別の論理で動く、純粋に資質と将来性を見抜く神秘の選定システムである。にもかかわらず、その選定が結果的に「失われた王女」を引き当てた——という事実は、リゼロの世界観のなかで重大な意味を持つ。
すなわち、フェルトという存在は「神龍の選定」と「王家の血統」の二重の正統性を持つ唯一の王選候補なのである。Arc8では、貴族会の長老や宮廷魔導師の間で「この一致は偶然ではない」「神龍は王家の血を見抜いて選んだのではないか」という議論が静かに広がっていく。フェルトの政治的価値は、Arc8以降、他の4候補とは別次元へと跳ね上がっていく。
声優・赤﨑千夏とArc8の演技
フェルト役の声優は赤﨑千夏。アニメ第1期から一貫して担当しており、Arc1の「コソ泥少女」のキャンキャンした活発な声色から、Arc4の「ぶっ壊す宣言」での啖呵、Arc6〜Arc7の「王選候補としての落ち着き」へと、声の質感を段階的に変化させてきた優れた演技を見せている。
Arc8がアニメ化される際には、フェルトの「盗賊から本気の王選候補へ」の心境変化が、赤﨑千夏の演技でどう表現されるかが大きな見どころとなる。ロム爺と語り合うシーンの優しさ、ラインハルトに指示を出す時の毅然とした強さ、自分の出自に動揺する場面の繊細さ——一人のキャラの中に幾層もの感情が同居するArc8のフェルトは、声優の力量が問われる難役だ。赤﨑千夏ならその全てに応えてくれるだろう。
まとめ——盗賊フェルトから”フィルオーレ・ルグニカ”へ
Arc8でのフェルトは、派手な戦闘シーンや劇的な台詞回しで物語の主役を張るタイプではない。だが、リゼロという長大な物語のなかで、彼女ほど「ゆっくりと、しかし確実に成熟していく王選候補者」はいない。
Arc1の盗賊少女が、Arc8で「自分の意志で王選を続ける」と決意するまでに、どれだけの時間と経験が必要だったか。彼女が貧民街の人々を、ロム爺を、ラインハルトを、そして自分自身を見つめ直しながら積み上げてきた小さな歩みは、第八章でようやく「本気の王選候補者フェルト」という形に結晶する。
そして第九章では、ついに彼女の本名「フィルオーレ・ルグニカ」が明かされ、王族の血と王選候補という二つの正統性が彼女の身体で交わる。Arc8はその準備段階——盗賊フェルトが、自分の意志で「ルグニカの王」を背負う覚悟を固める章である。
フェルトという存在は、リゼロ世界における「血統と意志のどちらが人を王にするのか」という問いの体現者だ。Arc8の彼女は、その答えを「両方だ。血統だけでもダメ、意志だけでもダメ、両方が一人の人間のなかで噛み合った時、人は本物の王になる」と示し始めている。
Arc9で何が彼女に起こるのか——本名の判明、王座の継承権、ラインハルトとの新しい契約、王選の最終決着。すべてはArc8で彼女が踏み出した一歩から始まる。
原作小説で続きを読む
フェルトの王選候補者としての成長を、原作小説で詳しく追いかけることができる。Arc8〜Arc9の最新巻はもちろん、Arc1〜Arc6のフェルト登場巻も併せて読むと、彼女の変化の全貌が浮かび上がる。
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