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Re:ゼロから始める異世界生活のネタバレ【小説・アニメ・漫画】

【リゼロ第一章完全解説】スバルの異世界転移・エミリアとの出会い・最初の死に戻り

コンビニの帰り道、突然見知らぬ路地裏に立っていた——それがナツキ・スバルの異世界生活の始まりだった。なぜ転移したのか、どこへ行けばいいのか、何もわからないまま王都の喧噪に放り出され、スバルはそこで一人の少女と出会う。銀色の髪をなびかせ、猫型精霊パックを連れた少女・エミリア。彼女との出会いは、スバルに初めて「誰かのために動く理由」を与えた。しかし、その夜に待ち受けていたのは冷酷な暗殺者エルザ・グランヒルテであり、スバルは何の準備もないまま最初の「死」を迎えることになる。

第一章「怒涛の一日目」は、リゼロという物語の本質を最初の数十ページで容赦なく叩きつける導入部だ。ご都合主義の異世界転生モノへの痛烈な批判であり、同時に「それでも何かしたい」という人間の根源的な動機を描く物語の扉でもある。書籍1巻・アニメ第1期1〜3話に相当するこの章を、ループの詳細・心理描写・伏線の三つの軸で徹底的に読み解く。

目次

第一章の基本情報

項目 内容
章タイトル 第一章「怒涛の一日目」
書籍巻数 原作小説 第1巻
アニメ対応 第1期 第1話〜第3話
舞台 ルグニカ王国 王都(リューズの場所付近スラム街〜盗品蔵)
時間軸 スバルの異世界到着から「1日目」の終わりまで
死に戻り回数 3回(死は計3回。4度目のループで決着)
主要な脅威 エルザ・グランヒルテ(暗殺者)

第一章の主要登場人物

名前 役割 第一章での位置づけ
ナツキ・スバル 主人公 異世界に転移した一般人の高校生。死に戻りの力を持つが本人は知らない
エミリア ヒロイン 王選候補者のハーフエルフ。徽章を盗まれ取り戻そうとしている
パック 精霊 エミリアの使い魔の猫型大精霊。エミリアの父親代わりのような存在
フェルト 重要脇役 スラム街に暮らす盗品専門の少女。エミリアの徽章を盗んだ張本人
ロム爺 重要脇役 スラム街の盗品蔵を管理する老人。フェルトの保護者的存在
エルザ・グランヒルテ ヴィラン 「腸の狩人」と呼ばれる暗殺者。フェルトを雇った依頼人の刺客
ラインハルト・ヴァン・アストレア 救済者 王国最強の剣士「剣聖」。最終ループでスバルの呼びかけで登場

転移前のスバル——「何者でもない」高校生

ナツキ・スバルが異世界に転移した時、彼は17歳の高校生だった。しかし、「高校生」という括りは表面的なものに過ぎなかった。スバルは高校での人間関係に挫折し、次第に不登校・引きこもりとなっていた。父親・菜月賢一は快活で人望厚い人物として知られており、その息子として期待された幼少期から、周囲との関係がうまくいかなくなるにつれてスバルは内向きになっていった。

異世界転移の直前、スバルはコンビニで雑誌を立ち読みし、夜食を買って帰ろうとしていた。特別な使命も能力も持たない、どこにでもいる若者——いや、どこにでもいるわけでもない、少し疲れた若者——がそこにいた。

この設定は、リゼロが意図的に計算したものだ。多くの異世界転生モノは「何か特別な才能を持つ主人公」や「前世チートを引き継ぐ主人公」を描く。しかしスバルには何もない。魔法も使えない、剣も扱えない、コネも知識も特にない。あるのは「異世界転生モノをよく知っている」というメタ知識と、「どうせなんとかなるだろう」という楽観的な性格だけだった。

その楽観が、最初の夜に粉砕されることになる。

転移直後——説明なき異世界

スバルが目を開けると、見知らぬ路地裏に立っていた。転移のきっかけは何もない。光に包まれるわけでも、神様に呼ばれるわけでも、死ぬわけでもない。ただいつの間にか、そこにいた。

異世界転生モノのお約束——「転移の理由を説明してくれる人物」「チート能力の付与」「明確な目的の提示」——は一切ない。原作者・長月達平が意図したのは、「主人公が異世界に来ることの異常さ」を読者と主人公が同時に体感することだった。読者は物語冒頭から何の説明も受けていない。スバルも何の説明も受けていない。二人は同じスタートラインに立っている。

スバルはしかし、動揺しない——いや、正確には「動揺を抑え込む」。異世界転生モノのジャンルに精通しているスバルは、「これはそういう話の始まりだ」と解釈し、楽観的に状況を受け入れようとする。チートスキルを探し、現地人と仲良くなり、ヒロインを助けて無双する——そんな展開を心のどこかで期待しながら、王都の路地裏を歩き始める。

しかし現実は厳しかった。異世界の言語は読めない(書き言葉は別の文字体系)。お金もない。知り合いもいない。チート能力は何も発動しない。呑気に構えていたスバルはすぐに、地元のチンピラにからまれ、ボコボコにされる。

エミリアとの出会い——恩と好意の出発点

チンピラに絡まれていたスバルを助けたのが、エミリアだった。銀色の長い髪、紫紺の瞳、ハーフエルフ特有の耳——そして小さな猫型精霊・パックを連れた少女。スバルは一目で「ヒロインだ」と確信した(この直感は間違っていなかった)。

エミリアがスバルを助けたのは、チンピラからの救出という意味ではない。彼女はスバルが盗賊に財布を抜かれる瞬間を見ており、魔法で財布を回収した後で「これはあなたのもの」と返したのだ。恩を返しただけで、彼女に特別なスバルへの関心があったわけではない。

スバルにとっては違った。助けられた恩を返したいという気持ちが、次の行動を生んだ。エミリアが探し物(徽章=エンブレム)をなくしたと知ったスバルは、「手伝う」と申し出る。エミリアの反応は冷淡ではないが、積極的に歓迎するわけでもない。彼女には彼女なりの事情があり、見知らぬ人間を信頼する理由もない。二人の最初の関係は、そういった温度差の中にあった。

「サテラ」という偽名の意味

エミリアがスバルに名乗ったのは「サテラ」という名前だった。これは偽名だ。後に明らかになることだが、エミリアがこの名を使ったのは、スバルを近づけたくなかったからだ。「サテラ」は400年前に世界を滅ぼしかけたとされる「嫉妬の魔女」の名前であり、エミリアはその魔女と外見が瓜二つのハーフエルフとして差別と偏見にさらされてきた経歴を持つ。恐れられる名を使うことで、スバルが「この人には関わらない方がいい」と離れることを期待していた。

しかしスバルは「サテラ」という名を聞いても何のことか分からなかった。リゼロ世界の常識を持たない彼には、魔女の名が持つ重みが理解できなかった。結果としてエミリアの「遠ざけ」作戦は失敗した——スバルがスカポンタンだったからだ、と作者・長月達平は後にTwitterで言及している。

「サテラ」という名はArc1の最大の伏線の一つだ。エミリアとサテラの関係性は、物語後半で重要な核心へと発展する。詳しくはサテラ(嫉妬の魔女)解説記事を参照。

フェルトとロム爺——スラム街の世界観

エミリアの徽章を盗んだのはフェルトだった。王都のスラム街で生きる10代前半の少女で、盗みを生業としている。ロム爺(老人の半獣人)が管理する「盗品蔵」を拠点に、盗んだ品を売り買いする仕事をしている。

フェルトの第一印象は「小悪党」だ。口が悪く、人の話を聞かず、金の計算は得意だが道徳的な迷いはない。しかしスバルとのやりとりを通じて、彼女が単なる「悪い子」ではなく、厳しい環境で生き延びてきた強さを持つ少女だということが伝わる。

スラム街の描写は、リゼロの世界観が「ファンタジーのユートピア」ではないことを示している。王都という文明の中心にあっても、光の届かない場所に貧困と犯罪が根を張っている。王選という政治劇が動く一方で、その外側に生きる人々がいる——その対比が、後の物語展開に深みを与える。

ロム爺は表向き盗品売買の管理者だが、フェルトを単純に搾取しているわけではない。彼なりにフェルトを気にかけており、二人の関係は奇妙な保護者と被保護者の関係だ。フェルトの出自(後にルグニカ王家の血を引くことが判明)を思えば、この組み合わせの偶然は、物語の大きな伏線となっている。

エルザ・グランヒルテ——「腸の狩人」の登場

第一章のヴィランは、エルザ・グランヒルテという暗殺者だ。彼女はフェルトにエミリアの徽章を盗むよう依頼し、その後フェルトとロム爺もろとも始末しようとした人物だ(依頼人が誰であるかはArc1では明かされない)。

エルザの異名は「腸の狩人」。その名が示す通り、彼女は相手の腹を切り裂くことに美的なこだわりを持つ暗殺者だ。剣の腕は極めて高く、スバルのような一般人はもちろん、魔法を使えるエミリアも含め、初戦では圧倒的な実力差を見せつけた。

エルザの登場は、スバルにとって「異世界は楽しい冒険の場ではない」という最初の証明だった。

ループの全貌——3回の死と4度目の決着

第一章でスバルは3回死に、4度目のループで初めて決着をつける。それぞれのループで何を学び、何を変えようとしたかを追う。

ループ1:最初の死——楽観の崩壊

エミリアと共に盗品蔵へ向かったスバル。ロム爺との交渉で徽章の情報を得ようとするが、そこへエルザが現れる。ロム爺が殺され、フェルトも危機に陥る中、スバルはエミリアを守ろうとするが——エルザの刃がスバルの腹を切り裂いた。そのままエミリアも殺害され、スバルは「死」を迎える。

この最初の死は、圧倒的な「何もできなさ」だ。スバルにとっての「ゲームオーバー」に相当するが、しかし現実の死は痛く、恐ろしく、何の達成感もない。それがリゼロの第一の主張だ。「死んでやり直せる」というのは決して便利な能力ではなく、極めて残酷な経験の繰り返しだ。

ループ2:単独での再挑戦——情報を活かすも及ばず

元の位置(王都の路地裏)に戻ったスバルは、前のループで得た情報——エルザが来ること、盗品蔵が危険な場所であること——を活かそうとする。しかし今度は単独で行動し、ロム爺やフェルトが死亡した後でエルザに立ち向かうが、やはり力の差は埋められず死亡する。

このループで重要なのは、スバルが「情報の優位性だけでは状況を変えられない」ことを学ぶ点だ。知っていることと、それに対応できる実力があることは別問題だ。異世界転生モノの主人公が「知識チート」で活躍するパターンを、リゼロはここで否定する。

ループ3:意図せぬ死——スラム街での横死

3度目のループでは、スバルは盗品蔵へ向かう前にスラム街で別の危険に巻き込まれる。路地裏でトニチニカ(ならず者)にナイフで刺され、腰と背中を傷つけられて死亡する。エルザとの直接対決ですらない、あっけない死だ。

この死はスバルに重要な認識を与える。「分かっている危険を避けても、別の危険が存在する」。世界は一つの問題を解決すれば安全になるほど単純ではない。スバルにとって異世界は「クリア条件の明確なゲーム」ではなく、無数のリスクが折り重なる現実だった。

ループ4(最終):ラインハルト登場、決着

4度目のループで、スバルは戦略を変える。自分一人で問題を解決しようとするのをやめ、「助けを呼ぶ」という選択をとった。路地裏でラインハルトという衛兵(のちに剣聖と判明)に出会い、彼を盗品蔵へ連れていくことに成功する。

ラインハルト・ヴァン・アストレアは、ルグニカ王国が誇る最強の剣士「剣聖」だ。神剣の加護をはじめ数百とも言われる加護を持ち、エルザとの戦闘では圧倒的な実力差を見せた。エルザが「今日まで会ったどんな相手より強い」と感じるほどの力の差があった。

最終ループでフェルトは盗品蔵から脱出し、逃走中にラインハルトと出会う。ラインハルトはフェルトを保護し、彼女が持っていた徽章に触れると淡く赤く光った。ラインハルトはその反応を見て、フェルトが15年前に王都から消えた王家の血を引く少女であることを認識する——これがフェルトが後に王選候補者となる伏線の起点だ。

エルザはラインハルトとの戦いで撤退(もしくは致命傷を受ける)し、スバルとエミリアは生存。徽章はエミリアの元に戻り、第一章は幕を閉じる。

ラインハルト・ヴァン・アストレア——最強の剣士の存在感

第一章でのラインハルトの出番は短い。しかしその存在感は格別だ。

彼はスバルに対して誠実で礼儀正しく、「剣聖」という肩書きを持つ最強の剣士でありながら驕りを感じさせない。初対面のスバルの言葉(「悪い奴らが盗品蔵にいる」という説明)を信じ、即座に行動する。この判断の速さと誠実さがラインハルトというキャラクターの核心だ。

Arc1でのラインハルトは「助けに来る最強キャラ」という役割だが、物語全体を通じてその立ち位置は複雑になっていく。剣聖の加護は「剣に関するあらゆる加護を生まれながらに持つ」という理不尽な強さを意味しており、彼の存在はリゼロの世界における「格差」の象徴でもある。スバルが「力がない」ことを嫌というほど思い知らされる物語において、ラインハルトは「圧倒的な力を持って生まれた者」の対比として機能する。

ラインハルトの詳細な強さと設定についてはラインハルト解説記事を参照。

第一章が示した「リゼロ」のテーマ

ご都合主義の否定

第一章は、異世界転生モノのお約束を一つ一つ丁寧に裏切る構成だ。転移の理由説明なし。チート能力なし(死に戻りは「便利な力」ではなく「苦痛の繰り返し」だ)。助けてくれる師匠なし。ヒロインとの即時和解なし。敵の自動的な弱体化なし。

スバルが異世界転生モノのジャンルへの造詣を示す発言を繰り返すのは、作者が意図的に読者のメタ期待値を操作するためだ。スバルの「きっとそうなるはず」という期待と、現実の「そうはならない」のズレが、このシリーズの独特の緊張感を生み出す。

死に戻りが「呪い」である理由

3回の死を経験したスバルは、Arc1の終わりで「死に戻り」の力を持っていることに気づいていない。しかし読者はすでに知っている。この力がどれほど辛いものか、も。

通常の異世界転生チートは「強くなるための手段」だ。しかし死に戻りは「死の苦痛を繰り返す」ことを意味する。しかも、リセットしても「前のループで死んだ仲間」は生き返らない。前のループでのエミリアとの会話もロム爺との交渉も、全部消える。スバルだけが記憶を持つ。

この孤独な情報の非対称性——「自分だけが覚えている」「自分だけが死んだことを知っている」——が、スバルのPTSDの根源となる。Arc2以降、この重みはどんどん増していく。詳しくは死に戻りの仕組み解説を参照。

「力がないまま何かしたい」——スバルの本質的動機

第一章のスバルを動かしているのは、ヒーロー的な使命感でも崇高な理想でもない。「恩を返したい」「せっかく異世界に来たのだから何かしたい」という、ごく等身大の動機だ。

しかし等身大の動機は、等身大の行動しか生まない。力のないスバルが出来ることは限られている。それでも諦めず、3回死んで、4度目のループで「自分には出来ないことがある、だから助けを借りる」という現実的な判断に辿り着く。

これがスバルの成長の原型だ。「一人で何とかしようとして失敗し、他者の力を借りることを学ぶ」。この繰り返しが、スバルというキャラクターの物語全体を通じた主題になっている。スバルの成長とヒーロー性の考察も合わせて読んでほしい。

徽章(エンブレム)と王選——Arc1が提示する政治的背景

エミリアが探していた「徽章」(エンブレム)は、単なるアクセサリーではない。それはルグニカ王国の「王選」に関わる特別な品だ。

ルグニカ王国では、王家の血が絶えた後、次の王を決める「王選」が行われることになっていた。王選に参加できるのは、神竜ボルカニカとの盟約に定められた「竜の巫女」たる資格を持つ五人の候補者だけだ。その候補者を識別するのが、この徽章である。候補者が触れると輝き、その資格を証明する。

エミリアが徽章を持っていたのは、彼女が王選候補者の一人だったからだ。しかし当のスバルはそんな事情を何も知らない。単純に「恩人が困っているから助ける」という動機で動いていた。

徽章を盗まれたことで、エミリアは王選の参加資格証明ができなくなる——つまり徽章の紛失は、政治的に非常に重大な問題だった。フェルトがエルザに依頼されて徽章を盗んだという構図は、「誰かがエミリアを王選から排除しようとしている」可能性を示唆している。誰が依頼人か、Arc1では明かされないが、この伏線はArc2以降で徐々に輪郭を持ち始める。

また、フェルトが徽章に触れた際に赤く光ったことは、フェルト自身が「もう一人の王選候補者」であることを示している。スラム街で生きてきた少女が、実は15年前に王都から消えた王家の血筋——この発覚がArc1の最後を彩る驚きだ。ラインハルトはこれを即座に察知し、フェルトを保護することを決断する。

スバルはこの時点で王選の意味も、自分が関わった事件の政治的背景も、ほとんど理解していない。しかしArc2以降、エミリアの屋敷に滞在する中でスバルは少しずつルグニカ王国の構造と、エミリアが「なぜ王を目指しているのか」を知っていく。

スバルとエミリアの関係——Arc1における変化の軌跡

第一章を通じて、スバルとエミリアの関係はどのように変化したか。ループという特殊な構造の中で、二人の距離感を丁寧に追うことは、リゼロを楽しむ上で欠かせない視点だ。

ループ1・2:「サテラ」と「スバル」——名前のない関係

最初のループでは、スバルはエミリアを「サテラ」という偽名で呼び続ける。エミリアはスバルを「君」と呼ぶ。お互いの本名を知らない関係のまま、二人は死に別れる。1回目・2回目のループで死んだスバルにとって、その別れの記憶は自分の中だけにある。

エミリアはループのリセットでその記憶を持っていない。スバルとの会話も、一緒に歩いた夜も、消えてしまう。スバルだけが「すでにエミリアと出会ったことがある」記憶を持ったまま、三度目のループを生きている。この非対称性は、二人の関係の根底にある非対称性——「スバルがどれほどエミリアを大切にしていても、エミリアにとってスバルは見知らぬ人かもしれない」——の予告でもある。

最終ループ:本名の交換と関係の始まり

最終ループの終わり、エルザを退けた後、エミリアはスバルに本名を告げる。「エミリア。ただのエミリア」——「サテラ」ではなく、本当の名前。そしてエミリアはスバルに名前を尋ねる。「スバル。ナツキ・スバルだ」。

この名前の交換は、Arc1における二人の関係の実質的な始まりだ。恩を返すために手伝ってくれた見知らぬ人から、名前を知っている人へ。エミリアにとってスバルはまだ「よく分からない変な人」かもしれないが、少なくとも「信頼してもいい人」の側に入った瞬間だ。

スバルはこの後、いくつかのやりとりを経て、エミリアの屋敷へ招待される(Arc2の始まり)。エミリアが「お礼をしたい」という動機で招待したのか、それとも少しだけ好奇心があったのか——そのニュアンスが、Arc2以降のスバルとエミリアの関係に奥行きを与えている。

エミリアにとってのスバルの特異性

エミリアは王選候補者として、多くの人間から政治的な思惑や偏見の目で見られている。半エルフという外見から「魔女の化身」と差別されることもある。そんな環境の中で、スバルは「エミリアが何者かを知らないまま、ただ恩返しのために動いた」人物だ。

エミリアにとって、スバルのような動機で自分に関わってきた人間は珍しい。見返りを求めず(スバルは楽しいから動いたという側面もあるが)、エミリアの王選候補者としての立場を利用しようとせず、ただ「困っているなら手伝う」と言ったスバル。そのシンプルさが、エミリアが最終ループで本名を告げた一つの理由かもしれない。

エミリアの詳細なキャラクター分析はエミリア解説記事で行っているが、Arc1のエミリアは「誰に対しても礼儀正しくあろうとしながら、本当の意味で心を開いていない」状態にある。スバルはその扉を、Arc1の段階でわずかに開けた人物だ。

Arc1に散りばめられた伏線

伏線 Arc1での描写 回収される章/巻
「サテラ」という偽名 エミリアがスバルに名乗る偽名 Arc4〜Arc6(エミリアとサテラの関係)
エミリアの徽章 光る徽章が王選の鍵であることが示唆 Arc1終盤・Arc2以降(王選参加)
フェルトと徽章の反応 フェルトが徽章に触れると赤く光る Arc1終盤(フェルトの王家の血)
エルザの依頼人 誰かが徽章を奪わせようとしていた Arc2で依頼人の候補が示唆
死に戻りの力 スバルが3回死んでリセットされる Arc1〜全編(サテラによる付与が判明)
パックの強大な力 エミリアの危機時に強力な力が示唆 Arc2・Arc4(真の姿)
スバルのマナ無し設定 魔法が使えない・魔道具が反応しない Arc3以降(スバルの魔法習得と体の謎)

名言・印象的なシーン

「だから、お前のことは俺が助けてやる」

エミリアに助けてもらった恩を返したいというスバルの申し出。この言葉は軽率だが純粋な動機から来ている。力もないくせに「助けてやる」という言葉の無謀さこそが、スバルというキャラクターの面白さだ。

エミリア「……名前を教えてくれる?」スバル「スバル。ナツキ・スバルだ」

最終ループの決着後、エミリアはスバルに本名を告げ(「エミリア。ただのエミリア」)、スバルに名前を尋ねる。この短いやりとりが二人の関係の実質的な始まりだ。

パック「スバル、エミリアを頼む」

パックがスバルにエミリアを頼む場面は、一見コミカルだが、大精霊が「この人間を信頼する」という判断を下した瞬間でもある。パックの審美眼がスバルの本質を何か見抜いた、という読み方もできる。

フェルト「あんた、何がしたいんだ」

スバルの行動の意味を問うフェルトのセリフ。スバルには明確な答えがない。それがスバルの正直さでもあり、Arc1の主題——「なぜ動くのか」「何のために行動するのか」——の問いかけでもある。

Arc1が残したもの——Arc2・Arc3への橋渡し

第一章の終わりで、スバルとエミリアは初めてきちんと名前を名乗り合う。スバルは「エミリアたんマジ天使」という語録を残し(ラノバレ読者への注:原作では実際にこれに近いセリフがある)、二人の関係は「恩人と困った助っ人」という位置づけで一旦区切られる。

エミリアはスバルを王都に招待する代わりに(第二章)、スバルは徐々にエミリアの事情——王選への参加、徽章の意味、ルグニカ王国の政治——を知っていく。Arc1はその「何も知らない状態」の記録だ。

Arc2(屋敷の一週間編)では、スバルはエミリアの屋敷にお試し雇用される形で滞在し、レムとラム、ロズワール、ベアトリスという新キャラクターと出会う。より複雑な謎と脅威が待ち受けるArc2の詳細はArc2完全解説記事へ。

Arc1の「死に戻りを知らないスバルのループ」は、Arc2以降の「死に戻りを意識した上でのループ」と対比して読むと、スバルの成長の深さがより鮮明に見える。また、エミリアをサテラと呼んだことの伏線はArc4以降で回収され、「サテラとエミリアの関係性」という物語最大の謎の一つへと発展する。サテラ(嫉妬の魔女)の考察記事もぜひ。

リゼロという作品の底に流れるのは、「無力な者が、それでも諦めずに誰かのために立ち続ける」という物語だ。Arc1はその物語の最初の一歩——「無力なまま、それでも動いた」一日の記録として、9章・44巻以上に及ぶ大河の中で輝き続けている。

エミリアの詳細なキャラクター解説はエミリア解説記事、リゼロシリーズのトップページはリゼロ記事一覧へ。

まとめ:第一章が問いかけるもの

  • スバルの転移は「コンビニ帰りの高校生が、説明なしに路地裏へ」。チートも使命もない出発点
  • エミリアとの出会いは恩返しという純粋な動機から。「サテラ」という偽名はArc全体の最重要伏線
  • エルザという暗殺者との対決で3回死に、4度目で「助けを借りる」という正解に到達
  • ラインハルトの登場はフェルトの出自発覚と同時に起こり、Arc1の締めくくりとArc2への橋渡しを担う
  • 死に戻りは便利な力ではなく「死の苦痛と孤独の繰り返し」——これがリゼロの根本テーマ
  • 「力がないまま何かしたい」というスバルの本質的動機はArc9まで一貫して描かれる

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