第九章『名も無き星の光』は、プリシラ・バーリエルの騎士だった兜の男アルが、スバルたちを裏切る章です。スバルとベアトリスを禁術で封じ、『剣聖』ラインハルトと十三万回を超えて戦い、王都の監獄塔から大罪司教を連れ出し、最後には自分の本当の名前を叫ぶ。そして、その全部が一夜の書庫へ巻き戻されます。
本記事は、Web版(小説家になろう)第九章の本文を読み直し、「アルはなぜ裏切ったのか」「アルの正体は何か」「結末はどうなったのか」「王選はどうなったのか」という四つの疑問に答える形で、この章を解説します。書籍版でいえば39巻から44巻にかけての物語です(2026年10月8日時点)。出来事を1話ずつ時系列で追いたい方は、第9章のあらすじ・結末まとめを先にどうぞ。
【重要・第九章の結末までネタバレ注意】
本記事はWeb版第九章の終幕までと、書籍39〜45巻の公式あらすじの内容を含みます。アニメは4期(原作第六章『記憶の回廊』・プレアデス監視塔編)まで放送済みで、第九章は2026年10月8日時点で未アニメ化です。
第九章を30秒で――アルの裏切りの全体像
| 項目 | 原作の記述 |
|---|---|
| 章題 | 第九章『名も無き星の光』。Web版は1話〜59話と幕間2本、終幕『Reweave』(2025年11月27日公開)で完結 |
| 書籍版 | 39巻〜44巻。決着の場面は43巻(公式紹介ページが58話のレムの台詞を引く)。44巻の公式あらすじは「アルデバランとの戦いが決着し」から始まり、同じ巻で第十章の波乱に入る |
| アルがしたこと | 『賢者』の塔の書庫で、スバルとベアトリスを禁術「オル・シャマク」で黒い球体に封じた(11話・12話)。その球体を体に収めたまま、カララギのモゴレード大噴口を目指した(22話・58話) |
| 目的 | 町の人々には「世界の終わる原因を取り除く」と告げた(16話)。内心では「世界を終わらせる『魔女』を生まない」ことが、全ての歩みの目的だと語られる(58話) |
| 正体 | 『魔女』に創られた『後追い星』。親からもらった真名は「ナツキ・リゲル」(52話・57話) |
| 権能 | 『領域』。自分で定めた地点へ、死ぬたびに戻ってやり直す(12話・55話) |
| 結末 | スバルの『死に戻り』で、裏切りの夜の書庫まで巻き戻った。今度はスバルが「オル・シャマク」でアルを魔玉に封じた(59話) |
| 王選 | 決着はしない。候補者プリシラの死と、アルが自分の『死者の書』で『神龍』を乗っ取ったことで、王選の土台そのものが揺らいだ章(2話・12話・36話) |
裏切りの前触れ――「兄弟、頼みがある」
第九章の幕開けは、第八章「大災編」で描かれた『大災』の戦後処理です。プリシラを失ったアルは、亡き主の陣営とともに、スバルたちとは別の竜車で王国への帰路についていました。その身を案じるスバルの胸にあるのは、アルから受けた「兄弟、頼みがある」という頼み――『賢者』の塔にある、死んだ人の記録が読める本を読みたい、という願いです。スバルが「……プリシラの、『死者の書』」と噛みしめたその願いが、塔へ向かう旅の理由になりました(6話)。
塔では、フェルト陣営の魔法使いエッゾが、この願いに別の意味を見ていました。『死者の書』を読めば、自分にその人の存在を「上書き」できるかもしれない。エッゾはアルの狙いを、プリシラの「疑似的な死者の蘇生」ではないかと疑います(10話)。主を失った騎士の哀しみとして見るか、危うい企てとして見るか。スバルたちの警戒は、まだその段階にとどまっていました。
ところが12話で明かされるのは、裏切りの準備がこの時点でとうに終わっていたことです。塔への同行者を思い通りに整えるため、アルは辺境伯ロズワールに四千六十一回、鬼の姉妹に九百七十二回、内政官オットーに六百三十三回、砂海への同行者から「稀血」の持ち主(文脈からフレデリカとみられます)を外すのに九十四回、そして『彼女』――エミリアに五回のやり直しを重ねていました。ナツキ・スバルについては「――ゼロ」。一度もしくじらなかったのは、スバルのことを「知り尽くしていた」からだと語られます(12話)。
この場面で印象に残るのは、回数のあとに毎回置かれる一文です。「もう彼女はどこにもいないのだから」――人の情や優しさにつけ込むたびに、アルはこの言葉で自分を納得させます(12話)。前話の題名が『君はもうどこにもいない』であることを思えば(11話『君はもうどこにもいない』)、この裏切りはプリシラを失った空白から始まっている、と読むのが自然でしょう。
裏切りの夜――「始めるよ、先生」
塔の書庫で、スバルが自分自身の『死者の書』を見つけて隠した直後、アルは「――オル・シャマク」と唱え、スバルとベアトリスを黒い球体の中に閉じ込めました(11話・12話)。第九章の地の文はここで初めて彼を「アル――アルデバラン」と呼び、その戦いを、ナツキ・スバルを「この世界から取り除くための」ものだと明かします(11話)。
このとき彼が口にするのが、「始めるよ、先生。――オレがオレであるために」という一言です(11話)。ここでいう「先生」は、スバルのことではありません。52話でアルデバランが「――先生」と呼びかけている相手は、彼を創った『魔女』です(52話)。53話でも、彼は『魔女』の「ボクが創った君には勝てない」という言葉を思い出し、「ああ、そうだよ、先生」と答えています(53話)。
球体を手にしたアルは、それを体の内に収めて塔の頂へ向かい、自分の『死者の書』を『神龍』ボルカニカに読ませて、同じ記憶と目的を持つ『神龍』を味方にしました(12話)。王国の守護者である『神龍』が、裏切り者の側に付いたのです。
アルはなぜ裏切ったのか――本文が語る目的
アルの目的は、章のあちこちで少しずつ言葉を変えて語られます。並べてみると、一本の線が見えてきます。
- 11話(地の文)――ナツキ・スバルを「この世界から取り除く」ための戦いを始めた(11話)。
- 15話(ラインハルトへ)――「オレは世界を壊したいんじゃない。むしろ、その逆だ」(15話)。
- 16話(ミルーラの住民へ)――「七日で、世界の終わる原因を取り除く」(16話)。
- 22話(人質になったフェルトへ)――最終目的地はカララギの真ん中のモゴレード大噴口。「そこに、捨てなきゃならねぇもんがあるんだよ」(22話)。
- 58話(内心)――「世界を終わらせる『魔女』を生まない」。それが全ての歩みの目的だった(58話)。
「捨てなきゃならねぇもん」の正体は、58話で分かります。ラインハルトがアルデバランの腹を割って取り出したもの――スバルとベアトリスを封じた黒い球体こそ、モゴレード大噴口へ、「世界の彼方に通じる穴に捨て去るはず」のものでした(58話)。
同じ58話の内省には、彼がたどってきた三つの道が並びます。『魔女』の教えを受けて『魔女』を殺そうとして、失敗した。プリシラを王にすることで『魔女』を殺そうとして、失敗した。「初心に戻り」、ナツキ・スバルを除くことで『魔女』を殺そうとして――失敗した(58話)。プリシラを失ったアルは、彼女と出会う前の「初心」へ戻った。それが、この裏切りの筋道です。
殺すべき『魔女』が誰なのかは、本文で名指しされません。52話は、当時生き残っていた『魔女』は、アルを創った『魔女』のほかには、それ以外の『魔女』たちの「死因になった一人」しかいなかったと語り、その一人を「殺してもらわなくちゃならない」のが『後追い星』の存在意義だったと記します(52話)。この「一人」を『嫉妬の魔女』と読むのは、本記事を含む読者側の見立てです。
一方で、アルは人を殺さない戦い方を選び続けます。『神龍』の姿をしたもう一人の自分から、今ならラインハルトも倒せるのではと持ちかけられても、「地獄の蓋を閉じる役目がいなくなる」と退けました(15話)。裏切り者でありながら、彼は最後まで世界を守る側のつもりでいたのです。
アルの正体――ナツキ・リゲルと『後追い星』
アルの過去は、52話と53話『アルデバランⅠ・Ⅱ』で語られます。彼は『魔女』に創られた『後追い星』で、『魔女』は権能を使いこなすための「性能実験」と称して、百万を超える回数の『死』を彼に与えていました(52話)。初陣で負けた彼を庇った『魔女』は手足を全て失い、最後に「――オル・シャマク」の詠唱で彼を封じます。目を覚ましたアルデバランが告げられた場所は、剣奴孤島ギヌンハイブ。『魔女』の時代は「何百年も前の話」になっていました(52話)。
剣奴孤島で、彼は新入りの登竜門『スパルカ』を三百四回のやり直しで生き延びます。初陣で「数億も挑んで、それでも勝てなかった相手」に比べれば、苦痛ではなかったと語られます(53話)。55話の地の文は、本物の生の感情と向き合わない割り切りを、彼が「あの黒球から解放されてからの十八年間で身に付けた、ある種の処世術」だと記しています(55話)。
真名が明かされるのは、追い詰められた56話の終わりです。フェリスの治癒魔法で死ねなくなり、やり直しを封じられたアルデバランは、『暴食』のロイに向かって「オレの『名前』を喰え!!」と叫び、続けて名乗ります。「リゲル。――ナツキ・リゲルだ!!」(56話)。57話の地の文は、それが「『後追い星』を名乗る前の、アルデバランの真名」であり、「一度も直接呼ばれたことのない親からもらった名」だと説明します(57話)。
この名を聞いたペトラは、「ナツキ・リゲル」の響きが明らかにナツキ・スバルと無縁ではないと感じます。リゲルは星の名前で、ナツキはスバルと同じ家名だからです(58話)。ただし、アルとスバルの関係そのものは、第九章の本文では明かされていません。書籍39巻の公式あらすじは、彼を「失意の同郷者」と呼んでいます。アルという人物をさらに詳しく知りたい方は、アルデバラン完全解説とアル考察もあわせてどうぞ。
星の名前――「後に続くもの」と約440光年
スバル、アルデバラン、リゲルは、いずれも実在の星の名前です。アルデバランはおうし座のα星で、名前はアラビア語で「後に続くもの」を意味し、プレアデス星団の後を追うように昇ることに由来します。そのプレアデス星団の和名が「すばる」です。リゲルはオリオン座のβ星にあたります。終幕の地の文がアルデバランを『昴の後追い星』と記すのは(終幕『Reweave』)、この夜空の並びをなぞった呼び名です。
地球からの距離も見ておきます。名古屋市科学館の主要恒星データでは、アルデバランは約67光年、リゲルは約863光年です。すばるは約440光年で、2014年に報告された電波望遠鏡(VLBI)による測定では440〜448光年と求められています(アストロアーツ)。空の上ではすばるを追いかけて昇るアルデバランですが、地球からはすばるよりずっと近い星です。
権能『領域』――裏切りを可能にした「やり直し」
「――領域展開、マトリクス再定義」。12話の冒頭で繰り返されるこの言葉が、アルデバランの権能『領域』の発動です(12話)。自分で定めた地点へ、死ぬたびに戻って挑み直す力で、30話の地の文は、その維持には「精神の安定が必要不可欠」だと記します(30話)。55話によれば『領域』は魔女因子所縁の権能ですが、アルデバラン自身は魔女因子の所有者ではなく、『魔女』はこれを「番外や特例」と呼んでいました(55話)。
この力があるから、アルは一つの局面を何千回、何万回と挑み直せます。砂丘の夜のラインハルト戦は、16話の振り返りによれば「十三万二千四十三回負け続けて、十三万二千四十四回目でようやく終わらせられた」戦いでした(16話)。ペトラたちはこの力を、スバルの『死に戻り』と同じく『死』と引き換えの『時間遡行』ではないかと推し量り、それを前提に作戦を立てます(54話)。二つの力の違いは、死に戻りに似た能力の比較で整理しています。
誰がアルを止めたのか――『天敵』たちと『アルデバスターズ』
アルデバランの計画にとって最大の障害は、ナツキ・スバルとラインハルトでした。その二人を排除したあと、30話の地の文はエミリアを、アルデバランにとっての「天敵」と呼びます。生け捕りに特化した彼女の技は彼の権能と「相性最悪」で、しかも彼は、エミリアを傷付けることさえ心が咎めるのです(30話)。そして56話、彼の背後に立ったフェリスを、地の文は「アルデバランの三人の天敵、最後の一人」と記します(56話)。
アルの前に立ちはだかった人々を、章の順に並べると次のとおりです。
- ラインハルト(13〜15話)――砂丘の夜、十三万回を超える戦いの相手。最後は、ペトラが『死者の書』を読んだことで塔へ押し寄せた『嫉妬の魔女』の魔手を、一人で押しとどめるために残った。
- フェルト陣営(17〜22話)――フェルトとロム爺(バルガ・クロムウェル)が、五百人の荒くれ者とともに待ち伏せた。アルは「――今、オレは負けてた」と認め、最後はフェルトが「――アタシが、そっちの人質になる」と申し出て戦いを収めた(22話)。
- エミリア(24〜25話・30話)――季節外れの粉雪とともに王都に現れ、「――スバルと、ベアトリスを返して」と告げた(24話)。地の文は彼女を『氷結の魔女』と呼ぶ。
- ヴィルヘルム(25〜29話)――オットーの要請でヤエと剣を交え、『神龍』と斬り結んだところを、息子ハインケルに背後から刺された。
- 『アルデバスターズ』(41話〜)――エミリア陣営とフェルト陣営の混成軍。地の文は「王選混成軍」と記す(41話)。
- ペトラ(42話・54〜56話)――クリンドから預かった『憂鬱』の魔女因子で「――『憂鬱の魔女』、ペトラ・レイテって」と名乗り(42話)、『領域』のバグで一万回を超えるループに閉じ込められながら、それを終わらせた。
- フェリス(56話)――最大級の治癒魔法で、アルデバランから『死』を取り上げた(56話)。死ねなければ、やり直せない。
- ラインハルト(58話)――『不死鳥の加護』で戦場に戻り、アルデバランの腹から黒い球体を取り出して、スバルを解放した(58話)。
この顔ぶれの戦い方は、第9章のあらすじ・結末まとめの時系列パートで詳しく追っています。
結末――すべてを巻き戻した一度の『死に戻り』
59話『――じゃない』の舞台は、塔の初日の夜の書庫です。スバルは『死に戻り』を経て、アルが禁術を仕掛けようとするこの場面に、もう一度臨んでいました(戻った地点そのものは本文に書かれていません)。黒い球体の中でベアトリスが術式を解読していたため、今度はスバルが先に「――オル・シャマク」を唱え、アルデバランを封じます。地の文は、彼が「絶対に勝たなければならなかった戦いに、また負けた」と記しました(59話)。
幕間『エール』によれば、ペトラの作戦の終着点は、最初からスバルを『死に戻り』させて「全ての出来事をリセットする」ことでした(幕間『エール』)。だから、ラインハルトとの死闘も、ロイの脱獄も、ハインケルの凶刃も、戻った時間軸では起きていません。59話の最後の一行で、地の文は、スバルの誓いに「それでこそ、わたしのスバルっ」と応じるペトラを「『憂鬱の魔女』とならなかった少女」と呼んでいます(59話)。
終幕でスバルは、アルを封じた魔玉を首から下げて王都へ向かいます。魔玉に封じられていた間の戦いを、スバル自身ははっきり知っているわけではありません。それでも彼は「――ちゃんと知っていくよ。俺がいったい、何を背負ったのかを」と魔玉に触れます(終幕『Reweave』)。59話で彼がアルに向けた誓いは、「――俺は必ず、お前も救ってみせる」でした(59話)。裏切った男を「救う」と言い切ったこの一言が、第十章へ持ち越された最大の宿題です。
王選はどうなった?――第九章は「決着」ではなく「土台の揺らぎ」
先に答えると、第九章で王選の勝者は決まりません。この章で起きたのは、王選という仕組みの土台そのものが揺さぶられることでした。
- 候補者が一人欠けた――プリシラの死を受け、オットーは、欠けた席を誰かで補充するのか、五つの席の一つを欠いたまま王選を続けるのかと、『賢人会』の出方を考え始める(2話)。
- 『神龍』が離反した――ロム爺は、アルデバランに『神龍』がついたことを「王選の基盤が揺らぐ重大事」と言い、エミリアは「――王選自体が、なかったことになっちゃう?」と口にする。王選は、龍との盟約と竜歴石の予言を土台にした儀式だからだ(36話)。
- ロム爺はフェルトの功績を狙った――ロム爺が欲したのは、フェルトが王選を勝ち残るための、『剣聖』抜きの名声。プリステラの戦果は五人の候補者が一律に株を上げたものだったから、フェルト単独の功績がいる、という計算だ。ただし当のフェルトについては「無論、フェルトはそんなことは考えておらんじゃろうがな」と言い添えており、この打算はロム爺の側だけのものだ(20話)。
- 消えた王族の名が出た――ハインケルは、目の前の少女がフィルオーレ・ルグニカだと確信して「……これで、王選も終わりか」とつぶやく。王家が途絶えたことが王選の理由なのだから、途絶えていなかったと分かれば皆が掌を返す、という理屈だ(44話)。
そして終幕では、帝国にいた間の遅れを取り戻すため、ロズワールが主を失ったバーリエル領を味方に付けようと動きます。プリシラが遺した書状で、シュルトがバーリエル家の嫡子として迎えられることも明かされました(終幕『Reweave』)。最後に王城へ現れたのは、『神龍』を崇める『神龍教会』の修道女です。近衛騎士団長マーコスに伴われて王侯館を訪れた彼女は、フェリスに誰なのかと問われ、こう名乗ります。「――フィルオーレ。それが、わたくしの名前よ」(終幕『Reweave』)。
書籍45巻の公式あらすじは、『神龍教会』の『聖女』フィルオーレを「新たな候補者に加え」と紹介しています。王選の行方は、第10章のあらすじ総まとめで追いかけてください。候補者それぞれの立場は王選候補者のまとめにあります。
書籍では何巻?――39〜44巻の読みどころ
Web版の話数と書籍の巻の区切りは一致しません。ここでは各巻の公式あらすじ(KADOKAWA書籍紹介)が触れている出来事と、それにあたるWeb版の話を並べます。右端の列は、公式あらすじの出来事から本記事が当てはめた目安です。
| 巻 | 発売日 | 公式の惹句 | 公式あらすじが触れる出来事(Web版の目安) |
|---|---|---|---|
| 39巻 | 2024年9月25日 | 喪失と衝動の三十九幕 | 帝国からの帰還と、再び『賢者』の塔へ。「始めるよ、先生」(1〜11話) |
| 40巻 | 2025年3月24日 | 最強と最恐の四十幕 | 世界を敵に回すと宣言したアルデバランと、ラインハルトの死闘(13〜15話) |
| 41巻 | 2025年6月25日 | 願いと対価の四十一幕 | 王都で大罪司教を解放したアルデバランを阻む『氷結の魔女』(23〜25話)。スバルの『死者の書』を読んだペトラ(15話〜) |
| 42巻 | 2025年9月25日 | 代償と研鑽の四十二幕 | エミリア陣営とフェルト陣営の混成軍『アルデバスターズ』の総力戦(41話〜) |
| 43巻 | 2025年12月25日 | 祈りと喪失の四十三幕 | 限界を超える権能の暴走と、『憂鬱の魔女』と化した村娘(54〜56話)。紹介ページが58話のレムの台詞を引くため、決着の場面(57〜58話)までがこの巻の目安 |
| 44巻 | 2026年3月25日 | 別離と鎮魂の四十四幕 | 決着のあと、深い傷と誓いを胸に王都へ向かうスバルたち。王都では『神龍教会』の干渉が始まる(第十章。紹介ページの台詞は第十章9話・11話のもの) |
アルの裏切りを最初から味わうなら、39巻からです。帝国編のあとの静かな帰路が、そのまま裏切りの助走になっています。
読み返すと見えてくる、第九章の三つの仕掛け
「星が悪かったんだよ」は誰に向けた言葉か
アルの口癖「星が悪かった」は、第九章より前から使われています。第五章では、プリシラの物言いに激昂したスバルを「やめろ、兄弟」と止め、「運が……星が悪かったと思って見逃せや」と言っていました(第五章16話)。第九章では、ラインハルトとの戦いの中で「――星が悪かったのさ」と繰り返し(13話・14話)、フェルト陣営との戦いの前には「あんたらは強いよ。ただ――星が悪かったのさ」と呟きます(21話)。55話では、遠目に見つけたペトラが「――何かの、数を数えてた?」と呟くのがわかった瞬間、内側から溢れた衝動が「――星が、悪かったんだよ」という言葉になり、そのあと初めて自分から『領域』のバグを起こしました。『アルデバスターズ』が崩れ落ちたあとには、立ち尽くすペトラへ歩み寄りながら「星が、悪かったのさ」と口にしています(55話)。
この言葉の意味を解き明かすのが、51話『ヤエ・テンゼン』です。何千何万とその声を聞いたヤエは、それが責任転嫁ではないと気付きます。アルがこの言葉を口にするのは、いつも自分の理不尽な力が相手の望みを挫くときで、そこにあるのは慈悲や同情でした。言い換えれば「――お前が悪いわけじゃない」。そしてアルは、プリシラ・バーリエルの死を、星が悪かったとは言わなかったのです(51話)。
52話では、この言葉の出どころも明かされます。かつて『魔女』は、アルデバランに「――星が悪かったのさ」と告げました。地の文によれば、それは「アルデバランが悪いわけじゃない」という意味でした(52話)。彼は、自分がかけてもらった慰めの言葉を、自分が挫いた相手に向け続けていたことになります。
ただし、この言葉は相手への慰めだけではありません。59話で、書庫のどこかにあるはずのプリシラの『死者の書』を思ったアルは、それを読めば「また自分は揺らぐかもしれない」と恐れ、「――星が、悪かったんだよ」と口にします。地の文は、その言葉で「自分を諦めさせて」歩みを再開したと記します。そのあとの会話で「――三日、それじゃダメなのか?」と問うスバルにも、彼は「――星が、悪かったのさ」と答えます。その星を肯定的と否定的のどちらの目で見たのか、誰を責め誰を慰めたのかは「自分でも」わからなかった、と地の文は続けています。スバルの「オル・シャマク」でアルの世界が暗転するのは、この会話のすぐあとです(59話)。
各話の冒頭に置かれた「誓い」
41話から46話は、どの話も「――神様、仏様、オド・ラグナ様。生涯、飲酒をしないと誓います」のような一文で始まります(41話〜46話)。その正体が明かされるのが56話『ペトラ・レイテ』です。仲間たちは、『憂鬱』の権能の代価を「ペトラ以外の大勢で分け合って支払う」という条件で、彼女が魔女因子を持つことに納得していました。けれど、その方法で払えるのは一部の『圧縮』だけで、ペトラが自分の判断で使った分の代価は、彼女自身が捧げていたのです。「飲酒をしない。手紙を書かない。」と数え始めればきりがない誓いが、その代償の一覧でした(56話)。読み返すと、一行ごとに彼女が何を手放したのかが分かります。
名前を巡る章
第九章は、名前の章でもあります。親からもらった名を一度も直接呼ばれたことのない「ナツキ・リゲル」(57話)。『暴食』対策のために名を改めたペトラ。そして終幕で名乗られる「フィルオーレ」。名前と記憶を喰らう『暴食』が物語の鍵を握るからこそ、名乗ること、名を変えることの重さが際立ちます。章題の『名も無き星の光』を、本記事は、名を名乗らずに生きてきた『後追い星』を指す言葉として読みました。
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まとめ――『名も無き星の光』は誰の物語だったのか
第九章は、名を名乗らずに生きてきた『後追い星』が、プリシラを失った空白から「初心」へ戻り、スバルを取り除こうとした章です。十三万回を超えるやり直しで『剣聖』を退け、『神龍』を味方にし、それでも最後は、彼の心を揺さぶるエミリアに、フェリスの治癒に、ペトラの作戦に、そしてスバルのたった一度の『死に戻り』に止められました。
王選は決着せず、むしろ土台から揺らぎ、終幕で「フィルオーレ」を名乗る修道女が現れて第十章へ続きます。魔玉の中のアルを、スバルは「必ず、お前も救ってみせる」と誓いました(59話)。裏切りの章は、救済の約束で幕を閉じたのです。
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- リゼロアニメ 2nd Season(第4章・聖域編)
- リゼロアニメ 3rd Season(第5章・水門都市プリステラ編)
- リゼロアニメ 4th Season(第6章・プレアデス監視塔編/全19話・2026年9月30日に放送終了)
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