リゼロの世界観において、「亜人戦争」はルグニカ王国史上最大の内乱として刻まれている。現在のスバルが踏み込む王選・白鯨討伐・ヴォラキア帝国の物語は、この40年前の九年にわたる大戦なくしては語れない。
ヴィルヘルムとテレシアの「剣鬼恋歌」が生まれた舞台。ボルドー・ツェルゲフが「猛犬」から亜人排斥の強硬派へと変容した契機。ガーフィールとフレデリカの母リーシアが聖域に流れ着くことになった時代背景。本記事では、亜人戦争の発端から終結まで、そして現代ルグニカへの影響を原作小説の記述をもとに徹底解説する。
亜人戦争 概要テーブル
| 正式呼称 | 亜人戦争(Demi-Human War) |
|---|---|
| 時期 | 約40年前(現在のルグニカ基準) |
| 期間 | 9年間(ルグニカ王国史上最長の内乱) |
| 発端 | ヴォラキア国境付近での亜人商隊と人間の諍い→400年来の亜人蔑視への怒り爆発 |
| 王国側参戦勢力 | ルグニカ王国軍・ツェルゲフ隊・アストレア家・レメンディス家 他 |
| 亜人側参戦勢力 | 三大幹部(バルガ・クロムウェル、リブレ・フエルミ、スピンクス)率いる亜人連合軍 |
| 終結 | 国王ジオニス・ルグニカと代表クラグレル・ドーソンの会合による和平 |
| 勝敗 | 事実上の王国側勝利(ただし両陣営に甚大な被害) |
| 在位国王 | ジオニス・ルグニカ |
亜人戦争の背景——400年の差別と蔑視の蓄積
亜人戦争の根本的な原因は、400年前の嫉妬の魔女サテラが世界に惨禍をもたらして以降、亜人族がその「魔女の残滓」として不当に結びつけられてきた歴史にある。純粋な人間とは異なる外見・能力を持つ亜人たちは、魔女教への加担を疑われ、社会の末端に追いやられてきた。
ルグニカ王国においても、亜人は正規の市民権を持たず、奴隷売買の対象となり、人間と同等の法的保護を受けることができなかった。王都では表向き共存が成立していた時代もあったが、地方や国境付近では差別・虐待が日常的に行われていた。農村では亜人を家畜同然に扱うことも珍しくなく、亜人の子どもが学校へ通う権利すら認められていない地域も存在した。
蜂起の直接的きっかけ——ヴォラキア国境での事件
亜人戦争の「引き金」となったのは、ヴォラキア帝国との国境付近で起きた小さな事件だった。亜人族の商隊と人間の集団が諍いを起こし、それが発展して流血事件となった。この事件自体は局地的な衝突に過ぎなかったが、長年蓄積してきた怒りに火をつけるには十分だった。
亜人族の間に「もはや待っていても何も変わらない」という絶望と怒りが広がり、武装蜂起への機運が一気に高まった。各地の亜人集落で同時多発的に人間への報復行動が発生し、これがルグニカ全土を巻き込む大規模内乱へと発展していった。
亜人族の間には、この不条理への怒りが何世代にもわたって蓄積していた。そこに「大参謀」バルガ・クロムウェルという人物が現れ、その怒りを組織化・武装化することで、ルグニカ王国への全面戦争が勃発した。
バルガ・クロムウェルは、長年の亜人への人間の蔑視に深い憎悪を抱えており、「過ちを気付かせる」という大義名分を掲げた。彼の下に亜人族の英雄リブレ・フエルミが結集し、亜人族の連合軍が形成されていった。さらに「魔女」スピンクスがこの戦争に介入し、バルガを煽動して終わりのない大戦へと誘導していく。
スピンクスは魔女エキドナの魂が転写された存在であり、人間と亜人の争いを実験的に観察することを目的として亜人戦争を扇動した。彼女の存在は戦争の長期化に大きく貢献し、9年という異例の長期戦となった要因のひとつである。
亜人族の多様性——「亜人」とは何者か
亜人戦争を理解するうえで、「亜人」という言葉が指す存在の多様性を把握することが重要だ。リゼロの世界における亜人族には、獣人(ガーフィールのような外見変化を持つもの)、半亜人(フレデリカやリーシアのような混血)、巨人族、その他の非人間種族が含まれる。
彼らは見た目も能力も異なるが、「完全な人間ではない」という一点で同様の差別を受けてきた。バルガが組織した亜人連合軍は、この多様な亜人種族が「差別への怒り」という共通点で一時的に団結した軍だった。戦争が終わると、この連帯は急速に薄れ、各亜人族は再びバラバラの存在へと戻っていく。
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主要な戦場・戦闘——アイヒア湿地帯攻防戦
9年間の戦争には無数の戦場があったが、物語において最も重要な意味を持つのが「アイヒア湿地帯攻防戦」である。この戦いはツェルゲフ隊をはじめとする王国軍と、亜人族英雄リブレ・フエルミ率いる亜人軍の激突として記憶されている。
湿地帯という地形は亜人族に有利であり、魔女スピンクスによる弱体化の魔法陣が発動したことでツェルゲフ隊は壊滅寸前に追い込まれた。この苦境の中、リブレ・フエルミが戦場に降り立ち、その圧倒的な剣技で王国軍を蹂躙した。
この戦いでボルドー・ツェルゲフは、幼少期から共に過ごした副長ピボット・アーナンシーを失う。ピボットはヴィルヘルムを守るために身を挺して命を落とした。ボルドーにとって、この喪失は生涯にわたる精神的傷となり、亜人排斥思想の決定的な転換点となった。
グリム・ファウゼンはこのアイヒア湿地帯での戦闘においてリブレとの戦いで喉を傷つけられ、以後声を失うことになる。その傷は戦士としての勲章であると同時に、亜人戦争が個々の兵士に刻んだ消えない痕跡でもある。
また、「大参謀」バルガ・クロムウェルが巨人族の始祖を身に宿して王城を狙った際には、ヴィルヘルムが王城内での一対一の戦闘でこれを退け、王国陣営を優勢に傾けるという転換点の戦いもあった。
ルグニカ王国側の主要人物
ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア——「剣鬼」の誕生
ヴィルヘルムは亜人戦争において「剣鬼」と呼ばれた。加護(神聖な恩寵)を一切持たず、ただひたすらに剣を磨き上げることで戦場を生き抜いてきた彼は、その苛烈な戦いぶりで味方・敵問わず恐れられた。
もともと平民の出身であったヴィルヘルムは、ツェルゲフ隊の一員として従軍し、グリム・ファウゼン、ピボット・アーナンシー、キャロル・レメンディスらと共に戦場を駆け抜けた。彼の剣技は単純な才能や加護によるものではなく、絶え間ない鍛錬と「剣に生涯を捧げる」という執念から生まれた鬼のような技術だった。
バルガ・クロムウェルが巨人族の始祖の力を身に宿した際、ヴィルヘルムはこれを退けることで王国軍の勝機を広げた。しかしその代償として瀕死の重傷を負い、その苦境にテレシアが救援に現れることになる。
戦後、ヴィルヘルムはテレシアと結婚し「ヴァン・アストレア家」の婿となった。詩「剣鬼恋歌」はこの二人の伝説を後世に伝える物語である。
詳細: ヴィルヘルム Arc10 解説
テレシア・ヴァン・アストレア——剣聖の到来と終戦
テレシア・ヴァン・アストレアは亜人戦争当時の「剣聖」であった。神竜ボルカニカとの盟約によってルグニカ王家が得た恩恵のひとつ、剣聖の加護を有し、その力は一人で軍勢を退けるほどのものだった。
テレシアは最初、戦争への参戦を望んでいなかった。しかしヴィルヘルムが瀕死の状態に陥ったという知らせを受け、キャロル・レメンディスやツェルゲフ隊と共にトリアス領へ向かった。そして一人で亜人族の軍勢に立ち向かい、ヴィルヘルムを救出。単独で軍勢を撃退した。
テレシアが参戦したことで戦況は劇的に傾き、亜人戦争は終結へと向かった。彼女の参戦から2年後に戦争は幕を閉じる。この「参戦から2年での終結」という事実が、剣聖という存在の規格外の影響力を如実に示している。
終戦記念式典においてヴィルヘルムはテレシアに剣で決闘を申し込み——それはある意味での「剣鬼」の求婚であった——テレシアもまたヴィルヘルムを婿に迎えることを選んだ。
しかしこの「剣聖」テレシアの物語には、後の白鯨討伐戦での悲劇への伏線が含まれていた。Arc3の白鯨討伐の最中、戦場においてテレシアから剣聖の加護が孫のラインハルトへ転移した。加護を失ったテレシアは戦力を喪い、白鯨との戦いで命を落とした。ヴィルヘルムが幾度も白鯨への復讐を誓い続けた理由はここにある。
詳細: ラインハルト Arc10 解説
ボルドー・ツェルゲフ——「猛犬」から強硬派への転落
ボルドー・ツェルゲフはツェルゲフ隊の隊長として、亜人戦争においてルグニカ王国軍の中核部隊を率いた人物だ。「戦斧」と呼ばれるほどの豪腕と猛将ぶりで知られ、一人称は「俺」——粗削りながら部下への義理と情を持つ指揮官だった。
しかしアイヒア湿地帯での戦闘において、副長ピボット・アーナンシーを失ったことがボルドーを根底から変えた。ピボットは幼い頃からボルドーに仕えてきた忠実な副官であり、ヴィルヘルムを守るために身を投げ出して命を落とした。その死を目の当たりにしたボルドーの中で何かが壊れた。
亜人戦争後、ボルドーは一人称が「俺」から「私」に変わり、亜人排斥の強硬派として賢人会に列席するようになった。マイクロトフと共に議論を牽引する立場に就いた彼は、亜人族との共存に反対し続ける。
Arc10「獅子王の国」においてもボルドーは賢人会の強硬派の立場を貫く。若き日の「猛犬」の面影はなく、傷を抱えた老将として亜人差別の象徴的存在となっている。
詳細: ボルドー Arc10 解説
グリム・ファウゼン——不言の盾騎士
グリム・ファウゼンはツェルゲフ隊の最後の副隊長として知られる、「不言の盾騎士」だ。アイヒア湿地帯での戦闘においてリブレ・フエルミとの交戦で喉を傷つけられ、以後声を失った。
言葉を失ったグリムは、剣ではなく「盾」の達人として戦場を生き抜いた。その防御技術はヴィルヘルムとも長年の友情を育み、50年以上にわたる絆を結んでいる。グリムの沈黙は単なる障害ではなく、彼の戦士としての生き様そのものとなった。
Arc10においてグリムは孫娘フラム・グラシスへの継承という形で、亜人戦争時代の記憶と技を次世代に伝えようとしている。
詳細: グリム Arc10 解説
亜人側の主要人物——三大幹部の肖像
リブレ・フエルミ——亜人族の英雄にして最強の剣士
亜人族陣営の三大幹部のひとりであり、「毒蛇」と称されたリブレ・フエルミは、亜人族最強の剣士として知られる英雄だ。その剣技の凄まじさは、アイヒア湿地帯において王国軍精鋭のツェルゲフ隊を壊滅寸前まで追い込んだことでも明らかだ。
リブレはバルガやスピンクスよりも穏健派の人物であり、人間側との争いで大規模な被害が出る前に落とし所を探ろうと考えていた。亜人族の権利と尊厳を守ることが目的であり、無差別な殺戮を望んでいたわけではない。
大幹部三者が消えた後、リブレの親友であったクラグレル・ドーソンがリブレの遺言を受けて亜人族の代表となり、終戦交渉に臨んだ。リブレの穏健な意志は、こうして戦後の和平へとつながっていった。
バルガ・クロムウェル——「大参謀」と亜人戦争の設計者
バルガ・クロムウェルは「大参謀」の異名を持ち、亜人戦争全体の戦略を担った指導者だ。亜人族への長年の蔑視と差別に深い憎悪を抱え、ルグニカ王国に「過ちを気付かせる」という大義を掲げて戦争を起こした。
彼は単なる武力の人物ではなく、智略によって王国軍を翻弄する。巨人族の始祖を身に宿した際はヴィルヘルムとの一騎打ちで敗れ、これが王国側に傾く転換点となった。
バルガを戦争へと駆り立てたのは、魔女スピンクスの扇動でもあった。スピンクスは復讐の炎を燃やすバルガを巧みに操り、終わりのない戦争へと誘導した。
スピンクス——「魔女」と戦争の陰の扇動者
スピンクスは魔女エキドナの魂が転写された存在であり、亜人族陣営の大幹部のひとりとして名を連ねながら、実際の目的は「人間と亜人の争いを実験的に観察すること」にあった。
彼女は自分自身の不完全さを研究して「完全」に至るため、大規模な争いを通じてデータを収集しようとしていた。バルガを煽動して戦争を終わりのない消耗戦へと誘導したのはスピンクスの策略であり、亜人戦争が9年もの長きにわたった一因はここにある。
スピンクスはその後もルグニカの歴史に関与し続け、王都へのストライド・ヴォラキアの来襲時にも彼女のオドの一部が関連していることがわかっている。
戦争の転換点と終結
亜人戦争の転換点は複数あったが、最も決定的だったのはテレシア・ヴァン・アストレアの参戦だ。剣聖の加護を持つテレシアが戦場に現れたことで、亜人陣営は大幅に劣勢となった。
その後、三大幹部——バルガ・クロムウェル、リブレ・フエルミ、スピンクス——がそれぞれの経緯で戦場から退く形で、亜人陣営は組織的抵抗力を失っていった。大幹部たちが消えた後、リブレの遺言を受けたクラグレル・ドーソンが亜人族陣営の代表に就いた。
終結は、ルグニカ国王ジオニス・ルグニカとクラグレル・ドーソンの会合による和平交渉で実現した。ジオニス王は「人の良さが凄まじい」と評されるほど寛容な人物であり、バルガを王城に匿い保護を命じるなど、亜人族への敵意を持たなかった。その人柄が終戦交渉を可能にした。
戦争終結後、王都では記念式典が開催された。この式典において、ヴィルヘルムはテレシアに剣で挑み、婿として迎えられることになる。「剣鬼恋歌」として後世に語り継がれる場面である。
亜人戦争が現代に与えた影響
ボルドーの亜人排斥思想——Arc10「獅子王の国」での矛盾
亜人戦争がルグニカ現代社会に与えた最も明確な影響のひとつが、ボルドー・ツェルゲフの亜人排斥思想だ。賢人会のマイクロトフが穏健な姿勢をとるなか、ボルドーは一貫して亜人との共存に反対する強硬派として振る舞う。
しかしその根底にあるのは、ピボットへの愛情と喪失の痛みだ。ボルドーの「亜人排斥」は、論理的な政治思想というよりも、戦場でのトラウマが凝り固まった感情的反応であるともいえる。
Arc10においてフェルト陣営と亜人問題が絡み合う中、ボルドーの立場は王国の政治的緊張を高める要素となっている。亜人戦争から40年を経ても、その傷は癒えていない。
関連: ボルドー Arc10 解説 / ルグニカ王国 Arc10
フレデリカとガーフィールの母リーシア——亜人差別の被害者
亜人戦争は戦場だけで傷跡を残したわけではない。戦後の亜人差別の継続が、フレデリカとガーフィールの母であるリーシア・ティンゼルを苦しめ続けた。
リーシアは亜人の血を引く女性として生き、奴隷として売られ、獣人の集団からも追われ、森をひとりで彷徨いながら子どもたちを産んだ。亜人戦争が終結し表向き和平が成立した後も、地方では亜人への差別・迫害が続いており、リーシアはその犠牲者のひとりであった。
彼女が最終的に辿り着いたのが、ロズワール領の「聖域」だった。封印の結界で外の世界から切り離されたその場所は、差別から逃れた亜人たちの隠れ里となっていた。フレデリカとガーフィールはそこで生まれ育ったが、リーシアはやがて聖域を離れ、Arc3の時点では水門都市プリステラにいたことが確認されている。
関連: ガーフィール Arc10 解説 / フレデリカ Arc10 解説
Arc4 聖域——亜人差別の結果生まれた隔離空間
Arc4「魔女の茶会」の舞台となる「聖域」は、亜人戦争の歴史的遺産のひとつだ。人間と亜人の混血や純血の亜人たちが、外の世界の差別から逃れるために流れ着いた場所。ロズワール・L・メザーストが管理するその結界は、保護の場であると同時に閉じ込める檻でもあった。
ガーフィールが外の世界に恐怖心を抱いていた根本的な理由は、聖域という隔離された環境で育ったことにあるが、その環境を生み出したのは亜人戦争前後の差別構造である。
スバルがこの結界を解放し、聖域の住人たちが外の世界へ踏み出していく物語——それは亜人戦争から40年を経た「続きの歴史」でもある。
関連: ロム爺 Arc10 解説
ヴォラキア帝国における亜人政策との比較
ルグニカが亜人戦争を経て「和平と差別の継続」という複雑な状態に留まっているのに対し、ヴォラキア帝国は「実力主義」という別の形で亜人問題を扱ってきた。
ヴォラキア帝国では種族を問わず実力のある者が評価され、九神将にも亜人が含まれる。これは表向き平等に見えるが、実際には「亜人であることそのものへの差別」と「弱者への差別」が入り混じった独自の矛盾を抱えている。
Arc7においてヴィンセント・ヴォラキアがシュドラクの民と「血命の儀」で同盟を結んだことは、ヴォラキアの亜人政策における歴史的転換点となった。ルグニカの亜人戦争とは異なるアプローチで、亜人と人間の関係が模索されていく様子が描かれている。
関連: ヴォラキア帝国 完全解説 / ルグニカ王国 完全解説
Arc10「獅子王の国」——亜人問題の再燃
Arc10「獅子王の国」はルグニカを舞台とし、賢人会・王選・神龍教会という三つの権力が複雑に絡み合う。この中で亜人問題は再び政治的争点として浮上する。
ボルドーをはじめとする亜人排斥派と、フェルト陣営に代表される開放派の対立は、亜人戦争の記憶が40年を経ても現役の政治問題であることを示している。フェルトの正体がルグニカ王家の血筋(フィルオーレ)であることが明らかになる中、亜人を含む民衆の支持を得られるかどうかが王選の行方を左右する要素となっている。
ヨルナ・ミシグレがヴォラキア帝国の魔都カオスフレームで亜人の保護者として機能していることも、この時代の亜人問題の広がりを示す。ルグニカでは解決しきれなかった亜人の安住の地として、ヴォラキアの特定地域が機能しているという皮肉な構図がある。
関連: ヨルナ Arc10 解説 / 王選 Arc10 解説 / エミリア陣営 Arc10 解説
白鯨討伐との歴史的接続——Arc3の悲劇の真相
亜人戦争の最大の「後日譚」とも言えるのが、Arc3の白鯨討伐戦である。
亜人戦争終結後、テレシアとヴィルヘルムは結婚し、平穏な日々を送っていた。しかしやがて白鯨との討伐戦が組まれ、テレシアは剣聖として出陣することになる。そして戦場の最中、剣聖の加護はテレシアから孫のラインハルトへと転移した。
加護を失ったテレシアは白鯨との戦いで命を落とした。白鯨討伐は失敗に終わり、多くの犠牲者が出た。ヴィルヘルムは妻の死の原因が加護の転移にあると悟りながら、その怒りを幼いラインハルトにぶつけることになる——「お前がテレシアを殺した」という言葉は、アストレア家の断絶の始まりだった。
スバルが組織する白鯨再討伐戦(Arc3)において、ヴィルヘルムが参加する理由はここにある。テレシアへの愛情と白鯨への復讐——それは亜人戦争という長い物語が生み出した、もう一つの愛憎の歴史である。
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亜人戦争 主要人物一覧
| 陣営 | 人物 | 役割・備考 |
|---|---|---|
| 王国側 | ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア | 「剣鬼」。加護なしで剣一本の剣士。バルガ打倒の立役者。後にテレシアと結婚 |
| 王国側 | テレシア・ヴァン・アストレア | 「剣聖」。亜人戦争終結に最大貢献。後の白鯨討伐で命を落とす |
| 王国側 | ボルドー・ツェルゲフ | ツェルゲフ隊長。ピボット喪失後に亜人排斥派へ転落。現在は賢人会強硬派 |
| 王国側 | グリム・ファウゼン | ツェルゲフ隊副隊長。リブレとの交戦で声を失う。「不言の盾騎士」 |
| 王国側 | ピボット・アーナンシー | ツェルゲフ隊副長。アイヒア湿地帯でヴィルヘルムを守り戦死 |
| 王国側 | キャロル・レメンディス | 剣聖付き従者。グリムの支え。後にフェルトの「ばあや」 |
| 王国側 | ジオニス・ルグニカ | 在位中の国王。寛容な人柄。クラグレルとの和平交渉で終戦実現 |
| 亜人側 | リブレ・フエルミ(毒蛇) | 亜人族最強の剣士。穏健派。アイヒア湿地帯での活躍 |
| 亜人側 | バルガ・クロムウェル(大参謀) | 亜人戦争の設計者。ヴィルヘルムとの一騎打ちで敗れ転換点となる |
| 亜人側 | スピンクス(魔女) | エキドナの魂の転写体。戦争を扇動・長期化させた黒幕 |
| 亜人側(戦後) | クラグレル・ドーソン | リブレの遺言で代表就任。ジオニス王との交渉で和平実現 |
亜人戦争が問いかけるもの——リゼロのテーマとしての人種差別
亜人戦争というエピソードは、リゼロという作品が「ファンタジー」という外皮の下に持つ重いテーマを凝縮している。それは「差別と憎しみの連鎖は、どうすれば断ち切れるのか」という問いだ。
バルガは差別された怒りを戦争にぶつけ、ボルドーはその戦争の傷によって差別の側に転落した。スピンクスは争いを観察の対象として利用した。リブレは穏健な解決を望みながらも戦場に立ち続け、クラグレルはリブレの意志を受け継いで和平を実現した。ジオニスは王として赦す道を選んだ。
この複雑な連鎖の中で、誰もが「正しい側」と「間違った側」に単純に分類できない。亜人戦争が描くのは、差別という構造的暴力が個人をどのように変形させ、どのように後世に引き継がれるかという、長月達平の作家としての鋭い洞察だ。
スバルは何も知らずにこの傷跡の上に降り立った。しかし彼は聖域を解放し、ガーフィールを外の世界へ連れ出し、亜人との共存を当然のこととして行動する。過去の戦争を知らないからこそできる無邪気さと、それを知ったうえで乗り越えようとする意志——そのどちらもがリゼロという物語には内包されている。
まとめ——亜人戦争の歴史的意義
亜人戦争とは、単なる「40年前の出来事」ではない。それはリゼロという物語の現在を形成した根本的な地殻変動だった。
ヴィルヘルムとテレシアの「剣鬼恋歌」はこの戦争なくして生まれず、ボルドーの亜人排斥思想もピボットなくして形成されなかった。グリムの沈黙も、聖域というガーフィールとフレデリカの故郷も、リーシアの流浪も——すべてが亜人戦争という9年間の傷から生まれた。
そしてArc3の白鯨討伐、Arc4の聖域解放、Arc10の亜人問題の再燃という形で、亜人戦争の余韻は現代のスバルの物語と交差し続ける。
スピンクスという「魔女」が戦争を扇動した点は、リゼロという作品が繰り返し描くテーマ——大きな歴史は特定の個人の意思によって歪められる——を如実に示している。人間と亜人の間に横たわる溝は、一度の戦争では埋まらない。しかし聖域を解放したスバル、ヴィンセントと同盟を結んだシュドラク、そして王選に挑むフェルトという存在が、新しい歴史の可能性を指し示している。
亜人戦争を知ることは、リゼロという物語の深層を理解することに直結する。この9年間の内乱が現代のルグニカ・ヴォラキア・そしてスバルの物語にどう影響しているかを把握することで、Arc10「獅子王の国」をはじめとする最新の展開がより立体的に見えてくるはずだ。
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